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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

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2019.02.25 UP
CASE07

服薬ノンコンプライアンスから認知症などを疑って主治医へ報告

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

薬剤師が、患者の服薬ノンコンプライアンスから精神神経系の疾患を疑い、受診勧奨したところ、患者は脳梗塞に基づく認知症であることが判明した。一方で、薬剤師は、もっと前の段階で他科への受診を勧奨すれば、更に早期に発見できた可能性があると反省した。

Prescription処方内容は?

<処方1> 80 歳代の女性。病院の内科。オーダ/印字出力。

ケタスカプセル 10 mg 3 Cap 1日3回 毎食後 14日分
イフェンプロジル
酒石酸塩錠
20 mg「日医工」
3 錠 1日3回 毎食後 14日分
アイトロール錠 20 mg 2 錠 1日2回 朝夕食後 14日分

図.「ケタスカプセル 10 mg」(左)、「イフェンプロジル酒石酸塩錠 20 mg「日医工」」(右)の PTP シート。

<効能効果>
●ケタスカプセル 10 mg(イブジラスト)
  1. 気管支喘息
  2. 脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害によるめまいの改善
●イフェンプロジル酒石酸塩錠 20 mg「日医工」
  脳梗塞後遺症、脳出血後遺症に伴うめまいの改善
  ※先発医薬品はセロクラール錠である。
●アイトロール錠 20 mg(一硝酸イソソルビド)
  狭心症

Historyどのような経緯で起こったか?

これまで、患者の処方薬は一包化を行っており、長期にわたり同じ処方が続いていた(処方内容は示さない)。
以前に一般外科を受診後に来局したとき、患者の額には傷があり、腕にギブスをしていた。どうしたのかと尋ねたら、「道路で転んだ」と述べた。この時点で、薬剤師は怪我の話にあまり注意を払わず、詳細を聞かなかった。
前回、患者は薬が足りないと来局した。前々回も薬が足りないと言って予定した診察日より 1 週間早く来局していた。さらに、患者の話もチグハグであったことから、主治医の内科医への相談を勧めた(薬剤師は頭部の怪我については念頭になかった)。
今回、処方1の処方せんを持って来局した。患者の話しによると、内科の主治医に相談したところ、認知症の可能性があったため、他の専門病院で MRI 検査を受けることになったとのこと。その検査の結果、認知症は前頭葉にある脳梗塞が原因であると結論づけられた。その脳梗塞は、以前に転んだ時に頭を強く打ち付けたために出来たものではないかとのことであった。

Worst scenario最悪の事態

脳梗塞に起因する認知症の早期発見が遅れ、症状が悪化する。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

薬剤師の勧めにより、主治医である内科医師への患者からの申告がなければ、認知症の早期発見には繋がらなかった可能性がある。
薬剤師は、患者が転倒し頭部を強打したことを把握していたが、怪我の様子を詳細に尋ねていなかった。治療のために一般外科だけではなく、主治医の内科医への相談や、脳神経外科などへの受診勧奨を行っていれば、更に早期に認知症の発見に繋がったのではないかと反省している。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

患者の様子(服薬コンプライアンスの状況など)をよく観察し、主治医への申告、もしくは他科(今回の場合、一般外科だけでなく脳神経外科など)の受診を勧奨することが必要である。
患者の出す様々なサイン(服薬ノンコンプライアンス)や、転倒による頭部外傷などを見逃すことのないように、どんな些細なことにも関心をもって対処していくべきである。

Communication服薬指導は?

<服薬ノンコンプライアンスが把握された時点>
『服薬の間違いが多いようですね。薬が足りないということは、既に飲んでいるのに、再度飲んでしまったことが原因かもしれませんね。今回のような飲み過ぎはとても危険なことなのです。主治医の先生に今回の事を相談してみてください。患者さんが宜しければ、私の方からも医師の方へ報告しておきますね。』

<転倒後の来局時>
『道路で転んで、頭部を強く打ち付けてしまったのですね。今回は、外科にかかって骨折と傷の治療がされたのですね。このことは、是非、主治医へ報告してください。もし、今後、患者さん自身が、普段と違った様子や症状に気づくがれることがあれば、主治医へ伝えるようにしてくださいね。』

Special instruction特記事項は?

[イブジラストの薬効薬理]
イブジラストは、気管支喘息及び脳血管障害に臨床効果を発揮する。薬理学的には、ホスホジエステラーゼ阻害作用、ロイコトリエン・PAF に対する拮抗作用、プロスタサイクリン(PGI2)の作用増強作用を有する。気管支喘息に対しては、気道攣縮、気道炎症の抑制作用のほかに、気管支喘息患者に共通する気道過敏性の改善作用も認められる。脳血管障害に対しては、障害部位血流量の増加作用、抗血栓・血小板凝集塊解離作用が認められる。

ケタスカプセルのインタビューフォームより一部改変

[イフェンプロジル酒石酸塩の薬効薬理]
・脳循環に対する作用
動物実験において、脳動脈血流量の著明な血流増加が示されている。脳血管障害患者を対象にした検討では、全脳及び病巣部局所の血流増加が確認されている。これら循環改善作用は、血管平滑筋直接弛緩作用並びに非選択的な交感神経α受容体遮断作用によると考えられている。
・脳代謝に対する作用
動物実験において、脳虚血時の乳酸、ATP、グルコースなどの脳組織における代謝異常を改善し、脳ミトコンドリア機能の低下を改善することが示されている。
・血小板機能に対する作用
ヒトの血液を用いた検討において、血小板凝集を抑制することが示されている。この作用は、イフェンプロジルがセロトニン摂取並びに放出反応を抑制することから、血小板膜の安定化作用によるものと考えられている。また、血小板のα2 受容体を介して凝集を抑制することが示されている。脳血管障害患者による検討では、血小板粘着能の抑制の他、ADP等各種の血小板凝集惹起物質に対する抑制作用、血小板α2 受容体遮断に基づく血小板凝集抑制作用が報告されている。

セロクラールカプセル錠・細粒のインタビューフォームより一部改変

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