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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT TRAINING ROOM
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2019.02.25 UP
CASE32

《アタラックスのつもりでアダラートを処方してしまった医師》

  • 処方チェック
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  • その他

Incident何が起こったか?

アダラートカプセルが処方され、患者の家族も血圧が高いと述べたが、医師の処方意図はアタラックス-P カプセルであった。

Prescription処方内容は?

<処方> 80 歳代の男性。病院の精神科。オーダ/印字出力。

アダラートカプセル 10 mg 1Cp 1日1回 寝る前 30 日分
ロヒプノール錠 1 2錠 1日1回 寝る前 30 日分
パキシル錠 10 mg 4錠 1日2回 朝食後、寝る前 30 日分

図.アダラートカプセル 10 mg(左)とアタラックス-P カプセル 25 mg(右)のPTP シートとカプセル剤

<効能効果>
●アダラートカプセル 5 mg・10 mg(ニフェジピン)
本態性高血圧症、腎性高血圧症
狭心症
●アタラックス-P カプセル 25 mg・50 mg(ヒドロキシジンパモ酸塩)
蕁麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)
神経症における不安・緊張・抑うつ

Historyどのような経緯で起こったか?

患者の家族が代理で来局した。アダラートカプセルが初めて処方されていたので、医師から説明を聞いているかどうかを確認したところ、患者は血圧が高くなり、他科を受診中だということであった(どの診療科にかかっているのかは確認しなかった)。薬剤師は、「患者の血圧が高い」という家族の話から、特にアダラートの処方に問題はないように思った。家族は、医師が(精神科ではあるが)気をきかせて処方してくれたのではないかと思うので、そのままでも良いと言った。
しかし、初めて処方された薬であること、用法が就寝前1回となっていること、アダラートカプセルは殆ど使用されないこと、精神科医からの処方で循環器専門医からの処方ではないことなど、いくつかの違和感を感じたため、薬剤師は医師に疑義照会をした。
医師は「診察時に、患者が寝る時にむずむずすると訴えたので、アタラックスを処方したつもりであった。」ことが判明した。最終的に、アダラートカプセル 10 mg からアタラックス-P カプセル 25 mg に変更となった。

Worst scenario最悪の事態

血圧が一過性に大きく低下して転倒する。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

医師は、処方オーダリングの際に「アタラ」と三文字を入力して検索し、画面に表示されたアダラートカプセル 10 mg をアタラックスだと思い込んで、そのまま選択してしまった。(清音と濁音や半濁音を区別せずに検索するシステムである)
医師が処方したかったアタラックス-P カプセル 25 mg が病院の採用医薬品ではなかったため、処方オーダリングの検索画面に表示されなかった。
「アダラート」と「アタラックス」の薬名が類似していた。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

患者やその家族の言葉から一見辻褄があうような処方でも、多角的に判断してどんな些細なことでも疑わしい点があれば(本事例では多くの疑問点がある)、疑義照会する。

Watchword標語は?

・アダラートカプセルとアタラックス-P カプセルは薬名類似!
・処方に少しでも疑問があれば必ず疑義照会!

Special instruction特記事項は?

「アダラート」と「アタラックス」の類似度
薬名の類似度を数値的に表す指標として、東京大学大学院薬学系研究科・育薬学講座などでは「m2-vwhtfrag」を開発している。この指標によると、「アタラックス」と最も類似している薬名は「アダラート」ととなり、類似度は 1.3136 と計算される。m2-vwhtfrag 値が 0.456 よりも大きいと、薬名類似により医薬品の取り違えが生じる可能性が高いと予測される。

(「ルクライ」薬名類似度検索システム, http://www.rukurai.jp/)

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