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Incident何が起こったか?
右頬のレーザー治療後の消毒目的にマスキン液(5W/V%)が処方されたが、希釈せずに使用するには濃度が濃すぎること、希釈して使用するには処方量(50 mL)が多いことから、医師の処方ミスを疑った。
Prescription処方内容は?
<処方1> 1 歳の女児。病院の小児科。処方オーダリング。
マスキン液(5W/V%) | 50 mL | 1 日 1 回 | 塗布 |
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図.マスキン液(5W/V%)の包装(左)と 0.05% ヘキザック水 W の包装(右)。
(丸石製薬および吉田製薬のウェブサイトより)
<効能効果>
●マスキン液(5W/V%)<クロルヘキシジングルコン酸塩>
・手指・皮膚の消毒
・手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療機器の消毒
・皮膚の創傷部位の消毒、手術室・病室・家具・器具・物品などの消毒
●0.05% ヘキザック水 W <クロルヘキシジングルコン酸塩>
・皮膚の創傷部位の消毒
・手術室・病室・家具・器具・物品などの消毒
・結膜嚢の洗浄・消毒
・産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒
Historyどのような経緯で起こったか?
処方せん鑑査を担当した薬剤師は、マスキン液は通常 0.05~0.5% で使用されること、特に創傷部位には 0.05% の希釈溶液を用いるのが一般的であることから、今回の処方では濃すぎると疑問に思った。
また、希釈して使用するにしても、今回は右頬という狭い範囲に使用されるため、50 mL を希釈して 5 L(0.05% マスキン液を調製した場合)にすると量が多すぎると考えられた。
上記 2 点をふまえて医師に疑義照会を行った。その結果、医師から「使用濃度については知っていたが、マスキン液の 0.05% の製剤が採用品ではなかったので 5% で処方しました。薄めて使用するように指導してもらえないでしょうか。」との回答を得た。
希釈して使用する場合、大量に消毒液を調製しなければならないため、同一成分の消毒薬で「0.05% ヘキザック水 W」であれば、原液のまま使用できることを伝えた。その結果、以下に処方変更となった。
<処方2>(疑義照会後)
0.05% ヘキザック水 W | 50 mL | 1 日 1 回 | 塗布 |
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Worst scenario最悪の事態
肌がかぶれるなどの皮膚障害が起こる。
Assessment問題点の解析は? 何が問題か?
処方せん作成時に、医師が処方意図の希釈したクロルヘキシジングルコン酸塩製剤を見つけられなかったため、マスキン液 5% が処方されていた。
Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?
クロルヘキシジングルコン酸塩液剤は、濃度によって効能・効果が異なる(表1)。このことを十分理解して、使用用途を患者(場合によっては医師)に確認して適切に処方されているかを確認する。
表 1. クロルヘキシジングルコン酸塩の効能・効果別の使用濃度
効能・効果 | 用法・用量(クロルヘキシジングルコン酸塩としての濃度) |
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手指・皮膚の消毒、手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療用機器の消毒 | 0.1~0.5% の水溶液を用いる |
皮膚の創傷部位の消毒、手術室・病室・家具・器具・物品などの消毒 | 0.05% の水溶液を用いる |
結膜嚢の洗浄・消毒 | 0.05% 以下の水溶液を用いる |
産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒 | 0.02% 水溶液を用いる |
<参考文献:0.05% へキザック水 W 添付文書及びマスキン液 5% 添付文書>
Watchword標語は?
クロルヘキシジングルコン酸塩水溶液(マスキン、ヘキザックなど)は、“効能・効果”と“濃度”に注意!
Special instruction特記事項は?
クロルヘキシジングルコン酸塩の製剤としては、上記の 5%、0.05% のほか、20%、0.1%、0.5%、0.02% の製剤もある。用途に応じて、希釈せずそのまま、もしくは表1の濃度に希釈して用いられる。