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Incident何が起こったか?
患者は、高尿酸血症治療薬であるザイロリック錠を高血圧症治療薬と思っていた。
Prescription処方内容は?
<処方1> 40 歳代の男性。病院の内科。オーダ/印字出力。
ノルバスク錠 5 mg | 1 錠 | 1 日 1 回 | 朝食後 | 28 日分 |
---|---|---|---|---|
ディオバン錠 80 mg | 1 錠 | 1 日 1 回 | 朝食後 | 28 日分 |
ザイロリック錠 100 | 1 錠 | 1 日 2 回 | 朝夕食後 | 28 日分 |
図.「ザイロリック錠 100」の包装(左)と錠剤(右)。
<効能効果>
●ザイロリック錠 100(アロプリノール)
下記の場合における高尿酸血症の是正
痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症
Historyどのような経緯で起こったか?
患者は、これまでノルバスク錠とディオバン錠を服用していた。最近、尿酸値が上昇したため、ザイロリック錠が併用開始となった。併用開始からしばらくして、患者から「ザイロリック錠を服用するようになってから、血圧が下がったよ!」と申し出があった。
薬剤師が、ザイロリック錠は血圧を下げる薬ではないことを伝えたところ、患者から「薬情に血圧を下げるって書いてあるよ。」と言われた。薬剤師は、薬情の文章が不適正であったことを謝罪し、ザイロリック錠は積極的に血圧を下げる薬ではないことを再度説明し、納得してもらった。
Worst scenario最悪の事態
ザイロリック錠を降圧薬と思い込み、高尿酸血症の治療への患者の意識が低下する。
Assessment問題点の解析は? 何が問題か?
この薬局の薬情には、「尿酸値が高いことからくる高血圧を改善する」という文章が書かれていた。当薬局の薬情の文章は、レセコンメーカーのデータベースをそのまま使用していたが、薬剤師は、このような誤った文章であることに気付かずにいた。
ザイロリック錠などのアロプリノール製剤の添付文書上の適応は「下記の場合における高尿酸血症の是正:痛風、高尿酸血症をともなう高血圧症」とある。おそらく、レセコンメーカーのデータベースは、この適応症の文言を間違って反映していると思われる。効能は「高尿酸血症の是正」であり、「高血圧症の改善」ではない。
Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?
薬情の不適正な表現や、紛らわしい表現などは、薬局独自で修正する必要がある。
Communication服薬指導は?
『ザイロリック錠は、体内で尿酸が作られるのを抑え、血液中の尿酸の量を低下させます。通常、痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の是正に用いられます。しかし、だからといって高血圧症治療薬ではありません。』
Special instruction特記事項は?
アロプリノールの高血圧への適応について(※1)
アロプリノールが 1969 年に発売された当時は、痛風に対する治療効果の検討についてはすでに多くの報告があり、その有効性に関しては論を俟たないところであった。一方で、痛風の既往のない高尿酸血症に関しては、その治療意義が不明確であった。その後、「高尿酸血症を合併した高血圧患者」を対象として有効性と安全性が証明されたため、その適応が限定された。
アロプリノール製剤で、直接的に血圧を下げるという作用が期待できるわけではない。
引用文献:
(※1)久留一郎:アロプリノールの高血圧への適応. 日本医事新報, No.4647: 58-59, 2013.