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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.11.20 UP
CASE42

《マイスリー錠の頻回・過量処方に医師・薬剤師ともに気づかなかった》

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

処方日数より短い間隔でマイスリー錠が複数回処方されていた。

Prescription処方内容は?

<処方1> 20 歳代の女性。病院の内科。オーダ/印字出力。12 月 4 日。

クラリス錠 200 mg 2 錠 1 日 2 回 朝夕食後 18 日分
ピーエイ配合錠 2 錠 1 日 2 回 朝夕食後 18 日分
オノンカプセル 112.5 mg 4 Cap 1 日 2 回 朝夕食後 18 日分
マイスリー錠 5 mg 1 錠 1 日 1 回 就寝前 18 日分
<処方2> 11 月 24 日。
マイスリー錠 5 mg 1 錠 1 日 1 回 就寝前 18 日分
*10 月 27 日、11 月 6 日、11 月 13 日も同じ処方であった。

図.「マイスリー錠 5 mg」の PTP 包装(左)と錠剤(右)。

<効能効果>
●マイスリー錠 5 mg・10 mg(ゾルピデム酒石酸塩)
不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く)

Historyどのような経緯で起こったか?

この患者は軽い知的障害があり、会話をする上での障害はほとんど感じられないが、体の調子が悪いとすぐに薬に頼る傾向がある。薬に対する注文が非常に多く、医師によっては今まで出ている薬なら患者の言うとおりにそのまま出してしまうことがある。医師と話をした、しないなど、意図的かどうか不明だが嘘をつくことがあったり、会話の内容が二転三転する。また、頻繁に受診・来局を繰り返しており、11 月の来局数は 9 回であった。
また、患者からマイスリー錠を 1 日 1 回ではなく、複数回飲むことがあると聞いていた。午前中に飲んだり、昼寝のために飲んだりすることがあり、このことは医師に伝えてあるとのことであった(事実かどうか不明)。
12 月 4 日に処方チェックをした薬剤師が、11 月 13 日・11 月 24 日の薬歴に「早めの来局」と記載があったことに気づいた。そこで、医師に「マイスリー錠が 11 月 6 日、13 日、24 日にそれぞれ 18 日分出ており、あと 20 日分以上残っているはずで、このまま処方を出していくと、本人が過量に薬を持ってしまうかもしれませんし、保険を切られてしまう可能性もあります。どうしましょうか?」と疑義照会した。
医師は、マイスリー錠の処方がそんなに頻繁だったことに気がついておらず、今回は処方中止となった。患者は、「今回は薬は、無くてもまあいいです。」とのことだった。

Worst scenario最悪の事態

マイスリー錠の過量を長期服用して薬物依存が起こる。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

調処方が頻繁であることにもっと早く気づくべきであった。即ち、薬歴(特に 11 月 13 日・11 月 24 日の部分)の確認不足であった。
患者の背景もあり、薬剤師は、患者がどのような飲み方をしているか注意深く聞きだすことを数回にわたり怠っていた。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

患者と医師間で、意志の疎通ができているか常に確認する必要がある。
患者がどのような飲み方をしているか注意深く聞き出す。もしそれが不可能であれば、医師との協議を行って服薬状況を確認する。
一回、一回の処方だけでなく、過去に遡って薬歴をチェックする。

Communication服薬指導は?

 『前回、10 月 27 日にはマイスリー錠が 18 日分が処方されましたね。今日は 11 月 6 日ですが、10 日しかたっていません。今日も 18 日分がまた処方されていますね。お薬は余っているのではないですか?・・・・そうですか、就寝時だけでなく午前中や昼寝時にも飲んでいたのですね。だから足りなくなったのですね。そのことは医師に話してあるのですか?・・・・伝えてあるということですね。しかし、過量な服薬は危険ですので避けてくださいね。・・・・』(その後、患者の帰宅後に薬剤師は医師に連絡して、今後の対応について話し合うこととした)

Watchword標語は?

・患者と医師間の意志の疎通ができているか確認!
・患者の服薬コンプライアンスの確認!
・薬剤師と医師間の患者の服薬状況の協議!
・薬歴は過去に遡ってチェック!

Special instruction特記事項は?

マイスリー錠では、重大な副作用として依存性が知られており、連用により薬物依存(頻度不明)を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与することとされている。また、重要な基本的注意として、連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避け、投与を継続する場合には、治療上の必要性を十分に検討することとされている。

(マイスリー錠の医薬品添付文書、2017年3月改訂(第26版)、アステラス製薬)
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