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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.02.25 UP
CASE10

「薬って、順番に飲んでいったらダメなんだってね」と患者に言われた

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

患者より、「薬って、順番に飲んでいったらダメなんだってね、先生に怒られたよ。」と言われた。薬剤師は、服薬忘れの場合の対処法を説明していなかった。

Prescription処方内容は?

<処方1> 70 歳代の男性。病院の内科。オーダ/印字出力。

リピトール錠 5mg 1 錠 1日1回 朝食後 14日分
アダラート CR 錠 20mg 1 錠 1日1回 朝食後 14日分
アクトス錠 15mg 1 錠 1日1回 朝食後 14日分
ディオバン錠 20mg 2 錠 1日2回 朝夕食後 14日分
ウルソ錠 100mg 3 錠 1日3回 毎食後 14日分
コスパノン錠 40mg 3 錠 1日3回 毎食後 14日分
ムコスタ錠 100mg 3 錠 1日3回 毎食後 14日分
以上一包化        
[朝:7 剤]リピトール錠 5mg、アダラート CR 錠 20mg、アクトス錠 15mg、ディオバン錠 20mg、
      ウルソ錠 100mg、コスパノン錠 40mg、ムコスタ錠 100mg
[昼:3 剤]ウルソ錠 100mg、コスパノン錠 40mg、ムコスタ錠 100mg
[夕:4 剤]ディオバン錠 20mg、ウルソ錠 100mg、コスパノン錠 40mg、ムコスタ錠 100mg

図.アサ、ヒル、ヨルに服用する一包化薬。アサ、ヒル、ヨルの袋が繋がっている。

<効能効果>
●リピトール錠 5mg(アトルバスタチンカルシウム)
 高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
●アダラート CR 錠 20mg(ニフェジピン)
 高血圧症、腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症、狭心症、異型狭心症
●アクトス錠 15mg(ピオグリタゾン塩酸塩)
 2型糖尿病
●ディオバン錠 20mg(バルサルタン)
 高血圧症
●ウルソ錠 100mg(ウルソデオキシコール酸)
 ・下記疾患における利胆
  胆道(胆管・胆のう)系疾患及び胆汁うっ滞を伴う肝疾患
 ・慢性肝疾患における肝機能の改善
 ・下記疾患における消化不良
  小腸切除後遺症、炎症性小腸疾患
 ・外殻石灰化を認めないコレステロール系胆石の溶解
 ・原発性胆汁性肝硬変における肝機能の改善
 ・C型慢性肝疾患における肝機能の改善
●コスパノン錠 40mg(フロプロピオン)
 ・下記の疾患に伴う鎮痙効果
   肝胆道疾患:胆道ジスキネジー、胆石症、胆のう炎、胆管炎、胆のう剔出後遺症
   膵疾患:膵炎
   尿路結石
●ムコスタ錠 100mg(レバミピド)
 ・胃潰瘍
 ・下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
   急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期

Historyどのような経緯で起こったか?

これまで、処方1を用法毎に一包化し、一包化した薬にアサ、ヒル、ヨルと記載して患者に交付していた。
今回、患者より「薬って順番に飲んでいったらダメなんだってね、先生に怒られたよ。」と言われた。詳しく事情を聞いたところ、例えば昼に薬を飲めなかった場合、昼服用するはずであった「ヒル」の薬を夕に飲んで、翌朝は昨夕服用するはずであった「ヨル」を飲んでいたことがわかった。
患者は薬の内容を考えずに、とにかく順番に服用しなくてはいけないと思いこんでいたようである。

Worst scenario最悪の事態

夕の薬を朝に服用した場合、朝の血圧を十分にコントールできない可能性がある(アダラート CR 錠を服用せず、降圧薬がディオバン錠のみとなるため)。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

当該患者は、タクシードライバーであり、食事や生活パターンが不規則になっており、業務中は飲み忘れたり、運転中で飲めなかったりすることがあった。薬剤師は、一包化の袋に服用時期が記載してあることから、患者が今回のような間違った服用を思いつくとは推測できなかった。
一包化の調剤は、朝服用分、昼服用分、夕服用分とわけて分包することがほとんどである。しかし、当該患者は、朝・昼・夕と続けて順番に服用したいため(その理由を聞いておくべきであった)、朝服用分・昼服用分・夕服用分・朝服用分・昼服用分・夕服用分となる繰り返しの分包を希望していた。したがって、今回のような誤服薬に至る可能性は十分にあった。
後でわかったことであるが、患者は、処方された薬は必ず服用しなければ(体に入れなければ)ならず、忘れて飲めなかったり時間がなくて飲めなかった薬は、次の機会(朝服用しなかったら昼、夕服用しなかったら朝・・・・)に順番に服用しなければならいと考えていた。飲み忘れた場合の適正な対処法を認識していなかった(薬剤師からも説明されていなかった)。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

患者の食事や生活パターンを聞き取り、特殊な(当該患者はタクシードライバーで、服薬ノンコンプライアンスとなる可能性が高い)場合には、それに合わせた服薬指導を心がけるようにする。
服用時点が決められている薬剤に関しては、患者に対してその意味合い(なぜ朝なのか? なぜ夕なのか?・・・)をよく説明する必要がある。
飲み忘れた時の対処法は「薬のしおり」などに記載してあるが、患者に口頭でも具体的に説明する。
一包化における分包は、朝服用分、昼服用分、夕服用分とわけて分包して、今回のような誤服薬が起こる可能性を排除する。

Communication服薬指導は?

『仕事柄、飲み忘れたり、飲めなかったりすることが多いのですね。飲み忘れた場合は、気がついた時にできるだけ早く飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、忘れた分は飲まないで1回分を飛ばしてください。例えば、朝の分を忘れた時に、それを昼に飲んだり、朝分と昼分を一緒に飲んだり、夕の分を忘れたからといって、それを朝飲んだり、夕分と朝分を一緒に飲んだりすることのないようにしてください。誤って多く飲んだ場合は、医師または薬剤師に相談してください。』

Special instruction特記事項は?

飲み忘れなどがあっても、とにかく辻褄をあわせればよいと考えている患者は少なくない。以下は、飲み忘れた薬を後でまとめ飲みして、帳尻をあわせた患者のトラブル事例である。

[まとめ飲みしても問題ないと考える患者]

<処方> 58 歳の男性。

ジルテック錠 10mg 1 錠 1日1回 夕食後 14 日分
薬剤師は、患者がジルテック錠を 3 日間の服薬していなかったこと聞き、患者に対してきちっと服用するように注意を促した。
その後、患者は会計時にドリンク剤を購入していた。ドリンク剤を飲み終わった後のカウンターを見ると、ジルテック錠の PTP シートの殻が 3 錠分転がっているのを発見した。患者は 3 錠をまとめて一度に服用しており、なぜそのようなことをしたのかと聞くと、「薬が体に切れてたから、飲まなかった分を今飲んだ。これで追いついた。」と話した。本薬の最高投与量は 2 錠までとされているが、今回は 3 錠を服用してしまった。
自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事しないように十分に注意した。幸いなことに、患者には特段の症状の変化(悪化など)、事故などは見られていない。

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