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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.02.25 UP
CASE09

薬包の黒線マークと薬の説明書の記載が対応せず過量服用

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

マイスタン細粒の薬包に青線マークを入れたにもかかわらず、薬交付時の説明書には、エクセグラン散に青線マークを入れたと記載してしまった。患者は2日間、マイスタン細粒を倍量服用してしまった。

Prescription処方内容は?

<処方1> 4 歳代の女児。病院の内科。オーダ/印字出力。10 月 18 日。

Rp.1 エクセグラン散 20% 80mg(成分量) 1日2回 朝夕食後 28日分
Rp.2 マイスタン細粒 1% 6mg(成分量) 1日2回 朝夕食後 28日分

<処方2> 11 月 17 日。

Rp.1 エクセグラン散 20% 100mg(成分量) 1日2回 朝夕食後 35日分
Rp.2 マイスタン細粒 1% 6mg(成分量) 1日2回 朝夕食後 7日分

図.当該患者に対して最終的に交付された調剤薬(薬包)。

<効能効果>
●エクセグラン散 20%・錠 100mg(ゾニサミド)
  部分てんかん及び全般てんかんの下記発作型
   ・部分発作
    単純部分発作〔焦点発作(ジャクソン型を含む)、自律神経発作、精神運動発作〕
    複雑部分発作〔精神運動発作、焦点発作〕
    二次性全般化強直間代けいれん〔強直間代発作(大発作)〕
   ・全般発作
    強直間代発作〔強直間代発作(全般けいれん発作、大発作)〕
    強直発作〔全般けいれん発作〕
    非定型欠神発作〔異型小発作〕
   ・混合発作〔混合発作〕
●マイスタン細粒 1%、錠 5mg・錠 10mg(クロバザム)
  他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかんの下記発作型における抗てんかん薬との併用
   ・部分発作
    単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作
   ・全般発作
    強直間代発作、強直発作、非定型欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作

Historyどのような経緯で起こったか?

患児の母親が<処方2>の薬を取りに来た際、薬歴の記載通り、マイスタン細粒に青線を入れ渡ししたところ、母親から、前回はエクセグラン散に青線が入っており説明書にもそう書かれていたと指摘された。
母親に前回の薬を持って来てもらい確認したところ、前回の説明書の記載が間違っていることが判明した。マイスタン細粒の薬包に青線マークをつけているのに、「薬の説明書」にはエクセグラン散に青線入りと記入してしまっていた。薬歴には実際通りマイスタン細粒に青線を入れたことを記載していた。
母親は、<処方1>を交付した 10 月 18 日より前にもらった手持ちの薬を最近まで服用させていたが、2日前にエクセグラン散のみを飲みきったため、<処方1>のエグセグラン散(実際はマイスタン細粒)を残っていた手持ちのマイスタン細粒とあわせて服用させていた。
患児の体調は変わりなかったが、2日間はエクセグラン散を飲まずマイスタン細粒を2倍量服用していたことになる。
医師に連絡し状況を説明・謝罪したところ、「口頭で説明したように、2週間後から<処方2>の薬を飲むように伝えてほしい」とのことだった。
患児の母親に状況を説明し、調剤ミスを深く詫びた。
<処方1>のエクセグラン散(80mg/包)を作り直すとともに、今回の 100mg/包のエクセグラン散には赤線マーク、マイスタン細粒には青線マークを入れた。薬袋も別々に入れ、袋に薬品名と量を記載した。

Worst scenario最悪の事態

マイスタン細粒の2倍量服用により嗜眠、錯乱、失調、呼吸抑制、血圧低下、昏睡等があらわれる。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

当該薬局では、鑑査者が薬包に色線のマークを入れ、薬の説明書にも記載することになっており、二重チェックがおこなわれていかった。処方せんの備考欄にも、どちらにラインをいれたかが記載されていなかったため、薬歴記入時に再チェックができない状況だった。薬包に薬剤名の印字はなく、線の色で区別していた。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

薬包に薬剤名の印字をすることとした。
ラインで区別する場合には、調剤者が薬包に線を入れてその旨を処方せんの備考欄に記載し、鑑査者が再度チェックして一人で全て行わないようにすることとした。
薬袋にも薬品名、線の記入の有無を記載し再確認できるようにした。更に、薬袋も別々に入れ、袋に薬品名と量を記載する。
今回の直接的なトラブルの要因ではないが、残薬の確認も徹底し、自宅での薬の管理の適正化を支援することも重要である。

Watchword標語は?

・薬包には正しく色ラインを!
・色を間違えると過量服用! 過少量服用!

Special instruction特記事項は?

ゾニサミドは、ゾニサミドは benzisoxazole 骨格を基本としてmethanesulfonamide 構造を有し、多くの抗てんかん剤にみられる ureide 構造を含まないという特徴をもっている。抗けいれん作用の機序として、発作活動の伝播過程の遮断、てんかん原性焦点の抑制が考えられている。
ゾニサミドには別の効能効果もあり、トレリーフ錠 25 mg・OD 錠 25mg が発売されている。これは、2000 年に、日本人パーキンソン病患者に併発したけいれん発作の治療目的でゾニサミドを投与したところ、けいれん発作の消失とともにパーキンソン病症状の改善が認められた。また、レボドパ製剤に加えて他の抗パーキンソン病薬で治療中のパーキンソン病患者を対象とした臨床研究においても改善効果が確認され、パーキンソン病(レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合)に使用される。用法・用量は「レボドパ含有製剤と併用する。通常、成人にゾニサミドとして、1日1回 25mg を経口投与する。なお、パーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off 現象)の改善には、1日1回 50mg を経口投与する。」であり、てんかん治療の用法・用量である「通常、成人は最初1日 100~200mg を1~3回に分割経口投与する。以後1~2週ごとに増量して通常1日量 200~400mg まで漸増し、1~3回に分割経口投与する。なお、最高1日量は 600mg までとする。」よりも少ない。

エクセグラン錠・散、トレリーフ錠・OD 錠のインタビューフォームを一部改変

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