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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.02.25 UP
CASE06

ゾルのところゲルと誤処方した医師、それを見逃した薬剤師

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

薬剤師がイドメシン(一般名:インドメタシン)の外用剤を投薬しようとしたところ、患者から薬が違うと言われた。

Prescription処方内容は?

<処方1> 50 歳代の女性。病院の内科。手書き。

イドメシンコーワゲル 1% 30 g 1 本
*用法用量は不記載。

図1.イドメシンコーワゲル 1%
(35g)

図2.イドメシンコーワゾル 1%
(30g)

<効能効果>
●イドメシンコーワゲル 1%、イドメシンコーワゾル 1%(インドメタシン)
・下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
  変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、
  腱周囲炎、上腕骨上顆炎(テニス肘等)、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛

Historyどのような経緯で起こったか?

薬剤師は、調剤時に処方せんを見て「イドメシンコーワゲル 1% 35 g」の包装単位の記載間違いだ(医師が「35 g」のところ誤って「30 g」と記載した)と思った。その時点で医師に疑義照会せず、ゲル剤の 35 g チューブ(図1)を調剤した。調剤後、患者に投薬しようとして薬をみせたところ、患者は「こんなチューブではない。ボトルに入った水薬だ。」と述べた。
そこで初めて、処方が「イドメシンコーワゾル 1% 30 g」の名前の書き間違いだ(医師が「ゾル」のところ誤って「ゲル」と記載した)と気づいた。

Worst scenario最悪の事態

いつもの薬と違うことから、患者が薬剤の使用を中止して症状悪化、又は、使用してもいつもと使用勝手が相違していることから、使用を中止して症状悪化。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

「30 g」と記載された包装単位が、実際にあるイドメシンコーワゲルの包装単位「35 g」と近かったため、薬剤師は医師がうっかり書き間違ったと思ってしまい、薬剤名を間違っているなど予測もしなかった。しかも、30 g でなく 35 g であることを確認するために医師への疑義照会は必須であるが、実施しなった(そのまま調剤して交付しそうになった理由は不明である)。例えば、処方が 90 g と記載されていたとしたら、実際の用量とあまりにかけ離れているので、奇異に感じて疑義照会に至ったかもしれない。
薬剤師は、ゲル剤の存在は知っていた(当該薬局で頻繁に調剤する薬剤であった)が、ゾル剤が存在することを認識していなかった。ましてや、ゾル剤に 30 g の包装単位があることなどは知り得ない。
医師は、「ゾル」と「ゲル」の名称類似によって処方を間違った可能性がある。或いは、ゾル剤をゲル剤と思い込んでいた可能性もある。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

商標の類似性だけではなく、剤形の類似性(今回の「ゲル」と「ゾル」など)についてもチェックの対象であることを認識すべきである。但し、同じ商標でゾルとゲルが存在するのは、イドメシンのみである。
処方せんの記載に奇異(包装単位が 35 g のところ 30 g となっていた)を感じたら、どのような些細なことであっても医師に疑義照会し、問題点を解決して納得してから調剤する。
些細なことでも辻褄の合わない場合は、基本情報である添付文書などを必ず調査する。

Watchword標語は?

・イドメシンにはゾル、ゲル、クリームがある!
・薬名(商標・製剤・規格単位・包装単位)に少しでも奇異を感じたら添付文書・インタビューフォームを調査、医師に疑義照会!

Special instruction特記事項は?

[インドメタシンの薬効薬理など]
プロスタグランジン E2(PGE2)やプロスタグランジン I2(PGI2)は細動脈を拡張させ、他のケミカルメディエーターの血管透過性を亢進させる。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるインドメタシンは、アラキドン酸から PGE2 や PGI2 を生合成する主要酵素であるシクロオキシゲナーゼを阻害し、その結果として、抗炎症作用を示す。

インドメタシンは、内服剤・坐剤として各科領域の炎症性・疼痛性疾患に対する臨床効果を示す一方で、消化器系及び中枢神経系の全身性副作用を生じやすい。炎症性・疼痛性疾患は局所に限られることが多く、外用剤により薬物を疾患局所へ到達させることができれば、内服剤・坐剤の使用によりみられる全身性副作用の発現も軽減しうる。そこで、インドメタシンの外用剤が開発された。

イドメシンコーワ製剤(外用剤)には以下の 3 種類が存在する。
① イドメシンコーワゲル 1%(35 g と 70 g がある)
  患部に伸ばしやすくベタつきを抑えた軟膏剤(油脂性軟膏)
② イドメシンコーワゾル 1%(30 g と 45 g と 90 g がある)
  清涼感があり、べとつき感が少ない外用液剤(皮膚用水剤)
③ イドメシンコーワクリーム 1%(35 g と 70 g がある)
  理学療法時の使用に考慮したクリーム

イドメシンコーワゲル・ゾル・クリームのインタビューフォームより一部改変

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