- 処方チェック
- 一般調剤
- 服薬指導
- その他
Incident何が起こったか？
患者は、ベシケア OD 錠 5 mg を１回２錠で１日１回（10 mg/日）服用すべきところ、１日２回（20 mg/日）の２倍量を服用していた。
Prescription処方内容は？
＜処方１＞ 70 歳代の女性。病院の泌尿器科。7 月 13 日
| ベシケア OD 錠 5 mg | １錠 | １日１回 | 朝食後 | 17 日分 |
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＜処方２＞ 8 月 7 日、9 月 4 日。
| ベシケア OD 錠 5 mg | ２錠 | １日１回 | 朝食後 | 28 日分 |
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図．「ベシケア OD 錠 5 mg」の PTP シート（左）と錠剤（右）
（アステラス製薬株式会社のウェブページより）
＜効能効果＞
●ベシケア錠 2.5 mg・5 mg、OD 錠 2.5 mg・5 mg（コハク酸ソリフェナシン）
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
Historyどのような経緯で起こったか？
頻尿のため、7 月 13 日にベシケア OD 錠が初めて処方された。症状が改善されなかったため、8 月 7 日に 5 mg 錠１錠から 5 mg 錠２錠（ともに１日１回）に増量となった。
8 月 22 日に、患者より「8 月 7 日処方の薬が足りない。２週間分しかもらっていないのではないか？」と薬局に電話があった。薬局の在庫数は合っていたため、飲み方を確認したところ、患者は「１回２錠を服用していた。１回分ずつハサミで切って保管しているから、飲み方は間違いないはず。」との返答で、もう一度確認してみるとのことで電話を切った。
9 月 4 日も 8 月 7 日と同じ処方だった。電話の件が薬歴に残っていたので、患者に確認したところ、薬はやはり足りなかったと訴えた。そこで、用法用量を再度確認したところ、「えっ……。１日２回飲んでいたかもしれない……。確かこの薬は１回２錠で１日２回飲んでいた気がする。」とのことだった。
患者の状態を確認したところ、口がすごく乾く（ベシケア OD 錠の副作用である口渇の可能性が考えられる）と訴えたが、それ以外に変わったことはないとのこと。保管方法を確認すると、「袋から出して箱に入れているので、他からもらった薬の飲み方（１日２回服用）とゴチャゴチャになったのかもしれない。」との返答だった。薬剤師は、なるべく薬を薬袋から出して保管しないように伝えた。もし、薬袋から出して箱に保管する場合は、薬情も一緒に保管し、常に用法用量が分かるような工夫をするよう指導した。
Worst scenario最悪の事態
ベシケア OD 錠の過量服用で、尿閉などの重篤な副作用が惹起する。
Assessment問題点の解析は？ 何が問題か？
患者は、もらった薬を薬袋から出し、１回分ずつ（ベシケア OD 錠は２錠ずつ）切って、用法（１日２回服用、１日２回服用、１日３回服用）ごとに箱に入れて保管していた。患者は、他にも薬を服用しており（詳細不明）、それらの用法用量（１日２回服用）に引きずられ、１日２回服用の保管箱に入れてしまった。
また、患者は服用時に薬袋や薬情を確認することもなかった。
Plan問題点回避の計画は？ 確認ポイントは？
高齢者には、薬袋から薬を出し、PTP シートをハサミなどで切って箱に保管している患者が多いように思われる。保管方法や用法用量に間違いはないか、充分に確認する必要がある。
薬袋や薬情は必要ないと訴える患者が多々存在するが、その必要性を認識してもらい、服薬時にはそれらを適宜確認しながら服用する習慣をつけてもらうよう努める。
また、朝・昼・夕・就寝前に服用する薬を一袋にまとめる一包化調剤も飲み間違いを防止するためには有用である。
Communication服薬指導は？
『今回処方されておりますベシケア OD 錠は１回２錠を１日１回服用することになっております。他の薬剤では１日２回服用するタイプ、１日３回服用するタイプのものがあります。それらにつられて飲み間違わないようにしてください。それから、自宅での保管ですが、ハサミで切り離して保管するのではなく、薬袋の中に入れたままの方が飲み間違いが少ないかも知れません。毎回、薬袋を見ながら服薬タイミングを確認して正しく飲めます。また一包化調剤といって、朝・昼・夕・就寝前に服用する薬を一袋にまとめることも可能です。これなら、服薬回数を間違えることもありません。』
Special instruction特記事項は？
●ベシケア錠・OD 錠の副作用
国内で過活動膀胱患者を対象に安全性を評価した総症例数 1,267 例中、副作用発現症例は 577 例（45.5％）で、主なものは口内乾燥 358 例（28.3％）、便秘 182 例（14.4％）、霧視 42 例（3.3％）であった。製造販売後調査等（使用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験）では、7,254 例中 1,078 例（14.9％）に臨床検査値異常を含む副作用が認められ、主なものは口内乾燥 345 例（4.8％）、便秘 255 例（3.5％）、排尿困難 204 例（2.8％）等であった。
（ベシケア錠・OD 錠の医薬品添付文書、2016 年 6 月改訂）
