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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.02.25 UP
CASE03

オルメテック錠の減量で、医師の説明「"半分"の量にします」を、「患者さんの方で"半分"にして服用してください」と誤解

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

オルメテック錠が 20 mg/日から 10 mg/日へ減量となって 2 カ月後、患者がオルメテック錠 10 mg を自分で半分に割って(即ち 5 mg/日であり、医師の処方意図の 1/2 量)飲んでいたことが判明した。

Prescription処方内容は?

<処方1> 年齢、性別不詳。内科クリニック。オーダ/印字出力。

オルメテック錠20mg 1錠 1日1回 朝食後 30日分

<処方2>

オルメテック錠10mg 1錠 1日1回 朝食後 30日分

図1.オルメテック錠 10 mg(左)とオルメテック錠 20 mg(右)の包装(上)と錠剤(下)。

両剤の外観を比較すると、PTP シートの色は 20 mg 錠が水色で 10 mg 錠が緑色と異なるが、デザインは類似している。錠剤はともに白色、割線ありで、サイズは直径が 8.0 mm(20 mg 錠)と 7.0 mm(10 mg 錠)で類似している(ただし、刻印で規格を示す 20,10、識別番号の 332,331 の刻印は異なる)。

<効能効果>
●オルメテック錠(オルメサルタン メドキソミル)
高血圧症

Historyどのような経緯で起こったか?

オルメテック錠が<処方1>から<処方2>に減量されたとき、薬剤師は薬局に訪れた代理の方(患者との関係は不明)に対して「今日からお薬が半分量の 10 mgになっています。PTP シートの色が変わっています。1 錠当たりの量が減っているので、今まで通り 1 回 1 錠でお飲みください。」との説明を行った。
その翌月の受診時は、患者がオルメテック錠 10 mg の残薬があると申し出たため、処方されなかった。減量 2 カ月後の今回は、患者自身が薬局に訪れた。薬剤師が服薬指導をしている時に、患者は医師に「"半分"の量にします。」と言われたとのことで、オルメテック錠 10 mg を自分で半分に割って飲んでいたことが分かった。幸い、この間、症状の悪化は見られなかった。

Worst scenario最悪の事態

オルメテック錠の服用量が低下して、高血圧症治療に失敗する。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

オルメテックの減量時、薬局において、薬剤師は、代理の方への口頭説明のみしか行わず、患者本人に製剤と飲み方の変更について伝わるかどうかの配慮が不十分であった。薬剤師の説明内容は、代理の方から患者には伝わっていなかったと考えられる。
患者自身は、医師からの「"半分"の量にします。」というのが強く頭に残っており、「患者さんの方で"半分"にして服用してください。」と誤解してしまった可能性がある。更に、PTP シートの色(10mg シートが緑、20mg シートが青)が前と違っていることや、薬袋に記載された飲み方にはあまり注意を払わなかった可能性が考えられる。また、各シートの青と緑は、区別しにくく混乱する可能性のある色である。更に、10mg 錠には割線があったため、半分に割ることにも違和感はなかったのかもしれない。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

代理の方に対して薬剤を交付する際には、患者本人に服薬の注意点が伝わるかどうか十分な配慮が必要である。
特に、今回のように処方量の変更を伴う場合には、患者の薬識等も考慮して、代理の方への口頭説明だけでなく、メモ書きを薬袋に入れて注意を喚起する、必要に応じて直接連絡をとるなど、きめ細やかな指導を行う。
処方変更(オルメテックの減量)に対して、医師が患者へどのように説明したかなどのチェックも必要であろう(今回は、代理の方が来局したのでチェックできなかった)。その内容によっては、薬剤師から患者への説明内容も工夫する必要がある。

Communication服薬指導は?

代理の方へ『今日からお薬が半分量の 10 mg になっています。PTP シートの色が変わっていますから注意してください。1 錠当たりの量が減っているので、今まで通り 1 回 1 錠でお飲みください。患者さんにはメモ書きを作って薬袋の中に入れておきますから、ご覧になるように伝えてください。』

患者へ『医師からどのような説明を受けていますか? ・・・・「"半分"にして服用するようにと言われた」とのこと・・・・今回の処方は、前回に比べて半分量になっています。そこから更に半分にするのかどうか、医師に問い合わせますね・・・・疑義照会を実施、しばらくして・・・・医師にお聞きしたら、今回処方された 10 mg 錠を 1 回 1 錠、1 日 1 回飲むようにとのことです。ご自分で半錠にするのではありませんので間違わないようにしてください。』

Special instruction特記事項は?

[オルメサルタンの薬効薬理など]
レニン・アンジオテンシン系を抑制する薬剤として、レニン阻害薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンⅡ(AⅡ)受容体拮抗薬が降圧薬として開発されている。ACE はブラジキニン代謝に関与するキニナーゼⅡ と同一酵素であることから、ACE 阻害薬はその抑制作用によるブラジキニンの過剰に基づくと考えられる特異的な副作用である乾性咳嗽などの発現が知られている。一方、AⅡ 受容体拮抗薬は、AⅡ に対して受容体レベルで選択的に拮抗し、ブラジキニン代謝に直接影響を及ぼさないと考えられ、副作用の少ない降圧薬として評価されている。AⅡ 受容体拮抗薬の一つであるオルメサルタン メドキソミルは、イミダゾール環カルボキシル基をエステル化してプロドラッグとし、経口投与可能な薬剤として開発された高血圧症治療薬である。

オルメテック錠/オルメテックOD 錠のインタビューフォームより

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