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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.02.25 UP
CASE24

一包化した分包の袋、朝の薬ばかり服用してしまった患者

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

患者は、朝食後服用の薬を間違って昼食後や夕食後にも服用していた。

Prescription処方内容は?

<処方1> 80 歳代の男性。病院の循環器科。オーダ/印字出力。

ノルバスク OD 錠 5 mg 1 錠 1 日 1 回 朝食後 14 日分
ガスモチン錠 5 mg 3 錠 1 日 3 回 毎食後 14 日分
ムコダイン錠 500 mg 3 錠 1 日 3 回 毎食後 14 日分
一包化調剤        

図1.処方1を朝・昼・夕服用分に分けた一包化調剤。

<効能効果>
●ノルバスク OD 錠 5 mg
 高血圧症、狭心症
●ガスモチン錠 5 mg
 ○慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)
 ○経口腸管洗浄剤によるバリウム注腸X線造影検査前処置の補助
●ムコダイン錠 500 mg
 ○下記疾患の去痰
  上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、
  気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核  ○慢性副鼻腔炎の排膿

Historyどのような経緯で起こったか?

患者は、これまで、他の薬局で薬をもらっており、PTP シートのままで交付されていた。
患者の家族から、患者が正しく薬を服用できておらず、各薬剤を飲み終わるのがばらばらの日付になっていると相談された。薬剤師が医師へ連絡し、一包化して薬剤を交付することになった。一包化の分包紙には患者氏名と朝・昼・夕の服用タイミングを黒色で印字し、1日分ごと(朝・昼・夕つなげたまま)で切り、14 日分をまとめてひとつの薬袋に入れて交付した(図1)。
数週間後、患者の家族から、一包化の薬のうち朝の分だけがなくなり、昼・夕の薬が多く余っていると再度相談があった。朝食後の分を昼食後と夕食後にも服用し、ノルバスク OD 錠を毎食後に服用していたと考えられるが、幸い低血圧症状などの健康被害はなかった。
お薬カレンダー(図2)を渡し、家族が一週間分の薬をセットし、確認してあげるように話し合った。その後は、家族の協力もあり、間違えずに服用できている。

図.一週間分の薬がセットされたお薬カレンダー。

朝、昼、夕、ねる前(今回の事例では空となる)に分けられている。それぞれに、一包化された薬などを入れる。

Worst scenario最悪の事態

ノルバスク錠 OD 錠 5 mg の過量服用により低血圧症となり、転倒して入院。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

一包化の分包紙が1日分ごと(朝・昼・夕つなげたまま)で切ってあったにもかかわらず、患者が昼・夕にも朝の薬を飲んでしまった理由は、患者が3連の包みの一番左側(朝の薬)を順次切り取って服用していたためであった。一包化したのみで、一包化薬の飲む順序についての説明を行わなかったため、高齢である患者は、分包品ごとに内容が異なることを理解していなかった。
患者の家族に、患者の服薬コンプライアンスをモニタリングしてもらうなどの依頼をしていなかった。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

一包化をしたからといって、服薬コンプライアンスが不良である患者が、正しく服用できるようになると考えるのは禁物である。患者の薬識、理解度によっては、一包化によって服薬コンプライアンスが改善するとは限らない。一包化した薬剤の服薬方法について、丁寧に説明する必要がある。
自宅などで服薬をサポートしてくれる人がいるかどうかにも気を配り、家族や介護者にも十分な説明をして、依頼しておく。例えば、お薬カレンダーを渡し、家族(或いは薬剤師)が1週間分の薬をセットし確認する。

Communication服薬指導は?

『朝食後服用分、昼食後服用分、夕食後服用分にわけた分包の袋をお薬カレンダーに入れておきます。各曜日の分を朝食後、昼食後、夕食後に取り出して服用してください。』

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