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東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT
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2019.02.25 UP
CASE15

白内障手術後にも関わらず近医でカタリン K を処方してもらった

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

近医の内科クリニックからカタリン K<ピレノキシン>を処方されていた高齢患者が、実は病院の眼科で白内障の手術を受けていたことが判明した。

Prescription処方内容は?

<処方1> 80 歳代の女性。内科クリニック。オーダ/印字出力。

・・・・内服薬あり・・・・      
カタリン K 点眼用 0.005%(15mL) 2 本 1 日 3 回 両目に点眼

図.「カタリン K 点眼用 0.005%」の製剤と包装。顆粒(左)を溶解液(右)に用時溶解し点眼液を作る。

<効能効果>
●カタリン K 点眼用 0.005%(ピレノキシン)
初期老人性白内障

Historyどのような経緯で起こったか?

患者は、足が悪くなかなか眼科にいけないとのことで、以前より内科クリニックからカタリン K 点眼用が処方されていた。
ある時、点眼がうまくできているかを確認したところ、実は少し前に眼科で白内障の手術を受けていたことがわかった。患者によると、また白内障になったら困ると不安に思い、ずっとカタリン K の点眼を続けていたとのことだった。
患者に、カタリン K 点眼液はそのような目的での使用には適していないことを丁寧に説明した。患者は納得していたようだった。内科クリニックの医師にもその旨を伝え、カタリン K の処方は中止となった。

Worst scenario最悪の事態

漫然と使い続けることによって副作用が惹起する。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

薬剤師は、患者と内科クリニックでの治療の状況や症状については会話することがあったが、眼科での治療状況(手術済み、手術の予定など)についての確認が不十分であった(点眼液が正しく使用されているかを確認するのみだった)。
内科クリニックの医師も、眼科での治療状況を確認していなかった可能性がある。
患者は、内科の薬をもらいにきていたので、眼科の受診状況について内科クリニックの医師や薬局の薬剤師に話す必要はない(話しづらい)と感じていた可能性がある。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

処方医の専門でない薬剤が処方された場合(今回の場合、内科クリニックから点眼液が処方)には、その経緯について医師、患者から事情を聴取する。
医師は、専門外の薬剤を処方する場合には、専門医への受診勧奨、専門医への確認・問い合わせ(疾患の状況把握)が必要である。
患者は、受診状況や処方状況などについて、健康手帳やお薬手帳に記載して、全ての医療施設や薬局などに提示する。

Communication服薬指導は?

『しばらくの間、内科クリニックでカタリン K が処方されていますが、最後に眼科にかかったのはいつですか? ・・・・そうですか・・・・ この前、白内障の手術が終了したのですね。それでしたら、今回処方されたカタリン K について、内科クリニックの医師と眼科の医師に処方の意図について確認したいことがあります。宜しいでしょうか? ・・・・(しばらくして)カタリン K は必要ないことになりましたので処方から削除されました。』

Special instruction特記事項は?

ピレノキシンと白内障手術
白内障の成因は、有核アミノ酸(トリプトファン、チロジン等)の代謝異常で生じるキノイド物質によって、水晶体の水溶性蛋白が変性し不溶性化するためといわれている(キノイド学説)。ピレノキシンは、このキノイド物質の作用を競合的に阻害して、水晶体の透明性を維持させることにより、白内障の進行を抑制すると考えられている。
白内障手術では、水晶体を摘出して、人工の水晶体である眼内レンズを挿入する。したがって、ピレノキシンを点眼する有効性は認められないと考えられる。
白内障手術後は、眼内レンズが挿入されているので、水晶体が濁ると言う意味での白内障の再発はない。しかし、眼内レンズ挿入時に残される水晶体の袋(水晶体嚢)が濁る「後発白内障」が惹起されることがある。この後発白内障にピレノキシンが有効であるというエビデンスはない。また、後発白内障が発症した場合、レーザーによる治療で回復する。

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