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メディセレ薬局 現場からの声

電子処方箋、始めました

 皆さん、こんにちは。2023年1月から電子処方箋の運用が始まっていることはご存じでしょうか?メディセレ薬局も10月1日から、電子処方箋への対応を開始しました。電子処方箋を取り扱うためのシステムの更新や、これまで紙の処方箋に薬剤師が署名捺印していた代わりに電子的に署名するためのHPKI(Healthcare Public Key Infrastructure)カードの発行が完了し、いよいよ電子処方箋の取り扱いスタートです。

 ところで、電子処方箋とはどのような仕組みでしょうか。それを知るために、まず従来の紙の処方箋の運用について復習したいと思います。病院や診療所で発行される紙の処方箋には、医師が処方したお薬に関して必要な情報、薬の種類や量、飲み方などがすべて記載されています。一般的には、薬の名称(成分の名称)、1日の量、飲み方、必要日数、その他注意事項が、薬一つ一つに記載されています。この処方箋を患者さんから受け取り、薬局のシステムにつながったコンピューターに一つ一つ入力していきます。QRコードで入力支援が可能な処方箋もありますが、基本的にはすべて受付担当者が目視確認して手入力していきます。薬の数が2~3種類ならすぐですが、多い方であれば十数種類にもなり、飲み方も複雑になるため、入力・確認に時間が必要になります。今の薬局は、この入力結果を基本としてすべてのシステムが運用されているので、作業に間違いがあると患者さんにお渡しする薬に間違いが生じるリスクが上がります。メディセレ薬局でも、最終的な薬剤師の目視確認などで入力間違いに気づき、患者さんに薬を渡すまでに訂正をすることが稀にあります。もちろん、そのようなことがない方がよいのは当たり前ですが、機械的な支援なくして近年の薬局を動かすことはできません。

 電子処方箋になると、処方箋に記載されている情報を電子的に受け取ることができるため、紙の処方箋を目視で読み取って手入力する必要がなくなります。つまり、医師が意図して病院・診療所でカルテに入力した処方が、人の手を介することなく薬局のシステムにそのまま転送されることになります。この1点だけでも、調剤過誤のリスクを減らすことに大きく貢献するでしょう。さらに、電子処方箋のメリットはそれだけではありません。
電子処方箋は、病院・診療所と薬局を直接結ぶシステムではなく、病院・診療所→「電子処方箋管理サービス」→薬局という経路で送られてきます。この「電子処方箋管理サービス」は、患者さんの健康保険の加入情報を、医療機関がオンラインで確認できる「オンライン資格確認等システム」に付随して運用されています。すべての電子処方箋情報は、この「電子処方箋管理サービス」に集積されていきますので、自分の薬局に持ち込まれなかったその患者さんの処方薬との飲み合わせを、患者さんの同意のもとで確認することができるようになります。電子処方箋システムは、単に処方箋の内容を電子化して利便性を上げるだけではなく、処方情報の一元化でもあるのです。

 さて、この日本の処方箋環境を大きく変える電子処方箋ですが、どのぐらい広がっているのでしょうか。厚生労働省のホームページには「電子処方箋に対応している医療機関・薬局」の一覧が公開されています。10月1日時点で、病院・診療所・歯科は631施設、薬局は6,812施設が電子処方箋に対応しています。日本の病院・診療所・歯科の総数は約18万施設、薬局の総数は6万施設なので、電子処方箋に対応した病院・診療所・歯科は0.35%、薬局は11.35%となります(余談ですが、メディセレ薬局のある都島区では、電子処方箋に対応した病院・診療所・歯科は0施設、薬局は9施設です)。薬局の対応割合の方が、病院・診療所・歯科より大きいのは、病院・診療所・歯科は自施設で導入を決められるのに対し、薬局は処方箋を受ける医療機関のどこか1つでも電子処方箋を出すのであれば受け入れる準備が必要となるという要因の差があると思われます。もちろん、厚生労働省のホームページでの公開を希望していない施設もあるので実数はもう少し多いかと思いますが、まだまだ浸透しているとは言えない状況です。実際、メディセレ薬局でも電子処方箋が開始された1月以降、電子処方箋が持ち込まれたことも、問い合わせがあったこともありません。

 システムの大きな変化には時間がかかります。それまでの習慣を変えるには大きなエネルギーが必要です。なので、どんなに国が丁寧でわかりやすい制度を作り準備をしたとしても、1年程度で何十年と続いてきたこの国で処方箋のしくみが一気に変わることはないでしょう。しかし、電子処方箋の仕組みは今後の医療の質の向上のために絶対に必要なシステムです。ゆっくりでよいので、広く社会に広がっていくことを願っています。そして、メディセレ薬局では、当薬局での初めての電子処方箋の患者さんが来られる日を楽しみにしています。

メディセレ薬局 管理薬剤師

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