皆さん、こんにちは!
今回は慢性心不全に新しいお薬が薬価収載されたという事で、それについて調べてみましたのでお話したいと思います。
2021年9月15日、新機序の慢性心不全治療薬ベルイシグアト(商品名ベリキューボ:以下、同薬と呼ぶ)が発売されました。
適応は「慢性心不全。
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」となっています。
同薬は、抗心不全薬として初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を刺激する薬でsGCを刺激することにより細胞内の環状グアノシン-リン酸(cGMP)を増加させ、心不全増悪のリスクを低減させる経口薬となっています。
通常sGCは、血管内皮細胞から放出される一酸化窒素(NO)が結合することによって活性化されます。
これによって産生されたcGMPは、細胞内情報伝達のセカンドメッセンジャーとして、血管障害や心臓リモデリング、線維化、炎症などに対して抑制的に働きます。
一方心不全患者では、酸化ストレスや炎症で血管内皮が障害されることなどにより、NOの利用効率が低下。
sGCが活性化されにくいため、細胞内cGMPレベルが低下し、この状態が心不全の増悪に寄与していると言われています。
このように心不全患者で障害されているNO-sGC-cGMP経路を、同薬はsGCを直接刺激するとともに、内因性のNOに対する感受性を高めることで活性化し、心臓リモデリングや線維化の抑制、血管拡張などの作用をもたらすと考えられています。
既存の心不全治療に用いられるβ遮断薬やレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)は、心臓リモデリングに対する“アクセル”を抑制する作用があるのに対し、同薬と(以前コラムでも紹介しました)ネプリライシン阻害薬(ARNI:商品名エンレスト)は、cGMPシグナルを介して“ブレーキ”を活性化する作用があるイメージです。
ベルイシグアト(ベリキューボ)の上乗せは、β遮断薬やRA系阻害薬にはないブレーキの活性化作用を追加することになるため、さらなる予後改善効果が期待できるかもしれません。
また、同じcGMPシグナルを活性化する作用を持つネプリライシン阻害薬への上乗せに対してはどうか?心血管系の調節に関わるcGMPを産生する経路は2つあり、1つはNO-sGC-cGMP経路、もう1つはナトリウム利尿ペプチド受容体を介した経路があります。
前者は同薬によって、後者はネプリライシン阻害薬によって活性化されます。
この2つの経路は細胞内での局在が異なり、オーバーラップする部分は少ないと考えられているため、同薬はARNIへの上乗せでも効果を発揮できるようです。
今後、BNPやNT-proBNP、心臓リモデリングへの効果に関するデータがそろえば、治療体系における同薬の位置付けはより明確となりそうです。
心不全治療薬はARNIやSGLT2阻害薬の登場が記憶に新しいですが、今後も新薬の登場で大きく変わっていきそうで私自身も非常に期待しています。
薬学生の皆様は今回の心不全治療についていかがお考えでしょうか?
是非参考にして下さい!
メディセレ薬局 管理薬剤師 密原 将志
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