皆さん、こんにちは!
今回は糖尿病治療薬の1つであるSGLT2阻害薬の「フォシーガ」(一般名ダパグリフロジン)が、日本において慢性心不全に対する効能又は効果の追加承認を取得されましたので紹介したいと思います。
まず、SGLT2阻害薬とはその名のとおり、SGLT2の働きを阻害する薬剤です。
SGLT2の働きを阻害すると、近位尿細管でのグルコース再吸収が減り、その分だけ尿糖の排泄が増えます。
その結果、高血糖が改善されます。
そんな糖尿病治療薬がなぜ、心不全の治療薬として使用できる事になったのでしょうか?
もともと、糖尿病は心不全の進展要因であることは、多くの研究で明らかにされていました。
同時に、糖尿病は心血管疾患の主要な危険因子でもあります。
しかし、従来の糖尿病治療薬は心不全に対する予防効果を示すエビデンスに乏しいものでした。
ところが、2015年頃から、いくつかのSGLT2阻害薬が動脈硬化性心疾患合併の2型糖尿病患者の心不全入院や心血管死を減少させるという結果が報告され、SGLT2阻害薬の心保護作用に注目が集まりました。
ところが、それらの試験対象の多くは心不全を合併していない糖尿病患者でありました。
そこで、糖尿病合併の有無を問わず、心収縮能低下した心不全患者に対するダパグリフロジンの上乗せ投与効果を検証した大規模試験を行ったところ、糖尿病合併の有無に関わらず、ダパグリフロジン上乗せは有意に心血管死、心不全を抑制するという結果が報告されました。
ここで注意したいのが、本研究の対象が心不全の標準治療を受けている(ACE阻害薬・ARB、β遮断薬は9割以上、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が7割以上導入されている)患者であったため、ダパグリフロジンはあくまで標準治療をうけた慢性心不全患者に限り適応となります。
それと左室駆出率が保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与することとされています(添付文書参照)。
今後、他のSGLT2阻害薬も適応承認に追随すると思われますが、そこで気になるのが作用機序だと思います。
しかし、SGLT2阻害薬の心不全への作用機序は、いまだはっきりとわかっていません。
その作用機序が基礎実験や臨床研究から少しずつ明らかになっているところなのです。
恐らく諸説ありますが、腎臓を介した作用や血管への作用に加え、心臓への直接的な作用によって心不全への効果をもたらすと考えられています。
これらから、SGLT2阻害薬は心不全患者にとって、これまでにない新しい治療薬と期待されます。
今後の動向が気になるところです。
薬学生の皆様、将来現場に出て既存薬で治療が不十分な患者さんがおられましたら、医師と協議して検討してみてはいかがでしょうか?
是非、参考にしてください。
メディセレ薬局 管理薬剤師 密原 将志
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