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新規心不全治療薬「ARNI」エンレスト

皆さん、こんにちは!今回は新規心不全治療薬「ARNI」の「エンレスト」が発売されましたのでそのお話をしたいと思います。

「ARNI(アーニー)=angiotensin receptor neprilysin inhibitor」とはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB:高血圧治療薬の定番ですね)とネプリライシン阻害薬の合剤で、ネプリライシンという酵素を阻害するサクビトリル(プロドラッグ)という薬と、ARBであるバルサルタンの配合体で、内服すると体内でそれぞれの薬に分かれて作用するものだそうです。
現在実用化されている唯一のARNIはノバルティスが開発したエンレストになります。
ネプリライシンとは様々なペプチドを分解する酵素であり、その基質の1つに、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などのナトリウム利尿ペプチド(NP)があります。
ANPは血管拡張やナトリウム利尿作用を有し、その結果として血圧低下や抗線維化などの作用をもたらします。
ネプリライシン阻害薬とはそのANPを分解するネプリライシンを阻害する事でANPの濃度を上昇させ、心血管保護作用を狙った薬となります。
もっとも、ネプリライシン阻害薬単独では効果を得られません。
なぜならネプリライシンはアンジオテンシンⅡも分解するため、ネプリライシンだけを阻害するとレニン・アンジオテンシン(RA)系が亢進してしまい、血圧上昇や血管収縮などを引き起こしてしまうからです。
そこでARBも併用することで、RA系を抑制してネプリライシン阻害薬による効果を発揮させているのです。

 レニン・アンジオテンシン系の抑制は心不全治療効果がある、ということで、世界的にアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の使用がガイドラインでも認められ、実際にエナラプリル(先発:レニベース)が推奨されていますが、このARNI(エンレスト)は大規模臨床試験でエナラプリルと比較して、主要評価項目の心血管死亡・心不全入院を20%抑制し、また、心血管死亡、心不全入院、全死亡のいずれについても、20%前後の有意なリスク低下が認められたそうです。
エンレストの適応は「慢性心不全。
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
」とされています。
つまり、第一選択として使用するのではなく、RA系阻害薬(ARBやACE阻害薬)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬といった代表的な心不全治療薬を使用しても心不全症状やBNP高値が継続したり再入院を繰り返す患者さんに対してRA系阻害薬からARNIへの切り替えを検討するのが良いと思われます。
この切り替えにより、突然死や心不全増悪の抑制による生命予後の改善、再入院の減少が期待できそうです。
ちなみにエンレストとACE阻害薬の併用は
併用により相加的にブラジキニンの分解を抑制し、血管浮腫のリスクを増加させる可能性があるため禁忌とされており注意が必要です。
心不全も治療がうまくいかず再入院を繰り返す患者さんが多い疾患です。
就職後、既存薬で治療が不十分な患者さんがおられましたら、一度医師にご提案してみるのも良いかもしれません。
ご参考下さい。

メディセレ薬局  管理薬剤師  密原 将志

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