2020年度卒業予定者対象 薬剤師就職サポートサイト

東大客員教授 澤田先生のリスマネ道場

RISK MANEGAMENT TRAINING ROOM
前のページに戻る
2019.08.21 UP
CASE39

《製剤変更にともなう用量換算の処方ミスが投薬窓口で発覚!》

  • 処方チェック
  • 一般調剤
  • 服薬指導
  • その他

Incident何が起こったか?

B 病院から A 病院へと転院になり、これまでと同じ用法用量で治療を継続するはずであったが、製剤や規格の変更に伴う用量の換算や用法の入力を誤って処方箋が発行されていた。

Prescription処方内容は?

<処方1> 4 歳の女児。A 病院の小児科。オーダ/印字出力。(今回の処方)

1)バイアスピリン錠
100 mg(粉砕)
0.1 錠 1 日 1 回 夕食後
2)オルメテック錠
20 mg(粉砕)
0.025 錠 1 日 1 回 朝食後
3)アーチスト錠
2.5 mg(粉砕)
0.25 錠 1 日 1 回 朝食後
4)ワーファリン錠
1 mg(粉砕)
0.7 錠 1 日 1 回 朝食後
    全て 40 日分
*実際の処方に忠実に記載した
*「バイアスピリンの粉砕」問い合わせ済みである。

<処方2> B 病院の循環器科。(これまでの処方)

1)アスピリン
「ホエイ」
20 mg 1 日 1 回 夕食後
2)オルメテック錠
10 mg(粉砕)
0.5 mg 1 日 1 回 夕食後
3)アーチスト錠
10 mg(粉砕)
0.6 mg 1 日 1 回 夕食後
4)ワーファリン錠
1 mg(粉砕)
0.7 mg 1 日 1 回 夕食後
    全て 40 日分
*実際の処方に忠実に記載した。

<処方3> A 病院の小児科。(疑義照会後の処方)

1)バイアスピリン錠
100 mg(粉砕)
0.2 錠 1 日 1 回 夕食後
2)オルメテック錠
20 mg(粉砕)
0.025 錠 1 日 1 回 夕食後
3)アーチスト錠
2.5 mg(粉砕)
0.24 錠 1 日 1 回 夕食後
4)ワーファリン錠
1 mg(粉砕)
0.7 錠 1 日 1 回 夕食後
    全て 40 日分

<効能効果>
●バイアスピリン錠 100 mg(アスピリン腸溶錠)
・下記疾患における血栓・塞栓形成の抑制
  狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)
  心筋梗塞
 虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)
・冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制
・川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)

●オルメテック錠 5 mg・10 mg・20 mg・40 mg、OD 錠 10 mg・20 mg・40 mg
(オルメサルタン メドキソミル)
・高血圧症

●アーチスト錠 1.25 mg・2.5 mg・10 mg・20 mg(カルベジロール)
・本態性高血圧症(軽症〜中等症)〔10 mg・20 mg〕
・腎実質性高血圧症〔10 mg・20 mg〕
・狭心症〔10 mg・20 mg〕
・次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
  虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全〔1.25 mg・2.5 mg・10 mg〕
・頻脈性心房細動〔2.5 mg・10 mg・20 mg〕

●ワーファリン錠 0.5 mg・1 mg・5 mg、顆粒 0.2%(ワルファリンカリウム)
 ・血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防

Historyどのような経緯で起こったか?

患者は、今回より B 病院から A 病院へと転院になった。患者の母親へ投薬する際、「前の病院(B 病院)と処方内容、服用時間は変わらないはず。」と申し出があった。
今回の処方1は、前回の処方2に比べてアスピリンの用量が半分になっている他、規格変更にともなう用量の変更や用法の変更も見うけられた。そこで、医師に疑義照会を行った結果、A 病院で院内採用薬に合わせて処方薬を変更した際に、用量の換算を間違って計算していたことが分かった。さらに用法の記載ミスも同時に判明し、処方が修正された(処方3)。

Worst scenario最悪の事態

十分な治療効果が得られず、先天性心疾患が悪化する。

Assessment問題点の解析は? 何が問題か?

両病院の院内採用薬が異なっていために、B 病院の医師は処方薬の製剤・規格を変更する必要があった。その際に、1)アスピリンからバイアスピリン錠へ換算する際の計算を間違った、2)用法の確認が不十分だった。
薬局では、処方チェックや調剤の時点で、前回処方の確認および変更点に関する患者の母親や医師への確認が不十分であった。このため、患者の母親からの申し出があるまで、処方ミスに気がつかなかった。

Plan問題点回避の計画は? 確認ポイントは?

前回処方(薬歴)を確実に確認し、少しでも疑問があれば医師への疑義照会や患者への確認により、処方に間違いがないかを確認する。小児のように用量を細かく調整する必要がある場合には、とりわけ注意深く対応する必要がある。
錠剤の粉砕時には、粉砕する錠剤の規格や粉砕法、分包機の種類の違いによって調剤時の損失の程度が異なる可能性がある。微量な用量での粉砕指示の処方では、調剤法の変更や不明点についても注意深く確認する。

Watchword標語は?

転院による処方移行(転記、計算など)には間違いが少なくない!

Special instruction特記事項は?

[カルベジロール粉砕後の主薬の減少について]
粉砕調剤による主薬の損失が検討されている。カルベジロール錠 10 mg を乳棒、乳鉢を用いて粉砕し、コーティング剤を除くために 560-570 µm のふるいで篩過したものに、1 包につき 100 mg の乳糖(シオエ製薬)を加えて混和し、散剤自動分包器で分包をおこない、10 mg 錠 1 錠から 1 包 1.25 mg、2 錠から 1 包 2.5 mg、4 錠から 1 包 5 mg の分包品を各々 8 包ずつ作成した。この錠剤粉砕により、主薬の顕著な減少が明らかとなった(表1)。ただし、各過程での損失の程度は、乳糖の種類、粉砕、自動分包の各医療機関における独自の方法により結果に多少の相違は生ずると考えられる。

表1.分包された散剤中のカルベジロール含有量及び全調剤工程におけるカルベジロールの損失率

(佐々木誠 他、医療薬学、32(5):420-423,2006.の表を基に作成)

[バイアスピリン錠 100 mg の粉砕について]
バイアスピリン錠は腸溶錠であるので、急性心筋梗塞ならびに脳梗塞急性期の初期治療に用いる場合以外は、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用させる必要がある。

前のページに戻る
© MediCaree incorporated. All Rights Reserved.

PAGE TOP